MISORA
Cafe.
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繋がりが導いた家族経営カフェ
子どもの成長に合わせて
挑戦し続ける姿
第一部
家族で親子カフェを営むMISORAカフェの飯島さん。
子育て中のママへの想いをカタチに。
お店づくりや経営の経験がなかったMISORAカフェの飯島夫妻にとって、お店づくりは“ご縁と繋がり”によって築かれたものでした。
第一弾では、MISORAカフェの想いとお店ができるまでについてお届けします。
これから家族でお店を始めたい方のヒントがたくさんあると思います。
【MISORAカフェとは】
――自己紹介をお願いいたします。
飯島美歌(いいじま みか)です。
夫婦で0歳から来られる親子カフェ“ミソラカフェ”を営んでいて、4年目になります。主に調理の担当をしています。
飯島悠史です。主に接客担当をしています。
※以下、美歌さん→●、悠史さん→〇
――親子で来られるMISORAカフェさんですが、コンセプトやこだわりについて教えてください。
●MISORAカフェは0歳から来ることのできる親子カフェというイメージでつくりました。
長女が1歳前後だった頃にいろんな親子カフェへ行ったのですが、どちらのお店も「もっと大きい子向けだなー」と思ったのが正直なところで。
赤ちゃんが過ごせるスペースではなかったんですね。
そこで私たちがやるときはどの年齢の子にも対応できるというよりは、
「子供とお出かけするのが一番大変なのっていつだろう?」って考えたんです。
そのときに、0~2、3歳が一番大変だなと。0歳では0歳での大変さがあるし、1歳2歳3歳の大変さはさらにその大変さが尋常じゃないなって。うろうろするし、騒ぐし、それがママと子供にとっての日常で。そういう人たちが来られる場所をつくりたい!って思ったんです。
――そうですよね。年齢ごとの大変さもありますし、特に1歳~3歳ごろは親が注意をしても動きまわる年齢ですもんね。娘が3歳なので身に染みてよくわかります。
●そのころの子供たちの意思を大切にしないわけではないんですけど、MISORAカフェでは子供たちが喜ぶというよりも“お子さんのママが喜ぶことをしよう!”と思ったのがもともとのお店のコンセプトです。
●なので、お座敷にしてキャラクターのおもちゃを置いて子供が楽しいようにするのは簡単だったのですが、ママにちゃんとおしゃれな雰囲気の場所で外食をした気分を味わってほしいという想いが強くあって。友達の家みたいに落ち着きすぎるっていうのもナシ!だけど、寛げる場所でもあってほしいと。
――子育て中って孤独も感じやすいときなので、外に出ての気分転換って本当に大切ですよね!それもちゃんとお出かけして、綺麗なところでというそれだけで癒されます(笑)
●そう!綺麗な場所で、プラスチックじゃない器にのった美味しいものをママに食べてほしくて。心がけていることは温かいスープを温かいうちにママに食べてもらうこと!
1~2歳のママって温かいものを温かいうちに食べられることが不可能な時期じゃないですか?
――そうですね。まず、まだうまく自分では食べられないので子供にあげてから自分が食べるっていう流れになりますよね。
●基本的に冷め切ったものを味がわからなくなってから何食べたかわからないけど、とりあえず口の中に入れて食べるって感じですよね。パスタとかだいたい固まっている(笑)
――何食べているのだろ、私。ってなりますよね(笑)
●だからそういう風にならないように、ママが温かいうちに温かいものを食べられる工夫をするというのも私たちの中にはあって。
ソファ席側の壁にある壁掛け遊具もそのひとつなんです。
●私自身がキッズスペースについていくことがすごく嫌いで。結局席を離れなきゃいけないじゃないっていうのが好きではなくて。
自分の食事が運ばれてきているのに子供が遊びに行きたいって言ったら遊びに行かなきゃいけない。せっかく外食しているのに食事は冷め切っているし、味気ない気がしてしまうし…。
――家にいるときと変わらない状態になっちゃうんですよね。
●そう。ちゃんといい金額払って頼んだけどこれか…って。でも子どもが楽しいんだから「まぁいっか。」って、ママはなりがちなのですけど、やっぱり「そうじゃない!ママにもリラックスしてほしい!」って思ったからママがご飯を食べながら子供を見られる距離に遊べる場所があったらいいんじゃないかって、ここに作りました。
ここは3歳くらいの子には窮屈になっちゃうんですけど、1、2歳くらいの子たちまでなら大丈夫で、ママのためにという想いでつくりました。
――親子カフェではあるけれど、メインとしてはママのためのお店ということでしょうか?
●そうです!コンセプトは『ママのためのお店』。
子供のためではないママのためのお店だからお子様のメニューは子供が食べたいものじゃなくて、ママが子供に食べてほしいと思うメニューを出すようにしています。
あんまりいないと思うんです。うちで出しているような蒸し野菜とおにぎりを食べたいっていう子は。それよりもキャラクターが描かれているものとか、ゼリーやポテトが載っている方が子供は食べたいっていうと思うんですけど、そうじゃなくて、ママが食べさせたいなと思うメニューにしようって。
――私も娘と一緒に外食をすると、あんまり食べてほしくないけど…っていうものもあったりして。そして外食に連れ出してしまう罪悪感とかもあるし複雑な気持ちになることもあります。
●どういった食材なのかもわかるもので、ママが安心して外食する罪悪感を払拭できるようなものにしたくて。だから子供が食べたいと思うものはあんまり置いていないかもしれないです。
――私もミソラカフェさんへ子連れで何度か来させていただいていますが、食事についても子どもとの外食ということについても安心できるな、リラックスできるなと感じられてとっても助かっていました!
●ありがとうございます!ママがリラックス、ゆったりできることが第一でもあり、ママが喜ぶことをするのがこだわりなので!
【料理嫌いから辿り着いた無農薬野菜】
――食材にもこだわっていると思うのですが、どうでしょうか?
●無農薬栽培の野菜を出しているのですが、とっても美味しかったんです!単純に。
あとは娘が本っ当によく食べてくれたんです!
もちろん、ママたちが子供に食べさせたいというのはベースにあったのですが、本音を言うと私、もともとは全然料理ができない人だったんです。
――そうなのですか!!????意外すぎて驚き過ぎて言葉がでないです!
●(笑)本当に料理ができなくて、料理することが好きではなくて。
けれどこの出会った野菜なら調理してみても味つけすらいらなかったんです。味付けで誤魔化さなくても美味しくて。素材の味で十分美味しいから私でも作れるじゃん!!みたいな(笑)
あとは主人も料理が苦手で食がジャンキーだった夫婦なので、野菜炒めか混ぜればOKみたいな調味料を使っていたんです。でも、子供が生まれてずっとそういう料理を食べさせるわけにはいけないと思い、試行錯誤したり学んでいく中で出会ったのが提供している無農薬野菜だったんです。
――もともと無農薬野菜とか健康やカラダを気遣った食が好きなのだとばかり思っていました!そしてお子さんがそんなによく食べてくれたんですね!
●そうなんです!娘がすっごく喜んで食べてくれていたのもあって、これはお店で出す価値もあるなと確信にも変わりました。普段野菜を食べない子でもこうやって喜んで食べてくれる野菜。喜んで食べるんだからママたちは嬉しいんじゃないかって思って無農薬野菜を扱おうことになりました。
野菜そのままの素材で美味しいという私たちの料理問題もクリア、そして何より子供が喜んで野菜を食べてくれたということが大きかったですね。
――素材のまま美味しいって一番重要だし、ママも安心できますもんね!
【MISORAカフェスタートまでの道/自分でお店を立ち上げるまで】
――MISORAカフェスタートのきっかけやそれまでのことなど教えてください。親子カフェになる前にこういう場所をつくろうと思ったきっかけなど。
●親子カフェにするきっかけは最初にお伝えした自分たちの子育て経験からなのですけど、他のきっかけとして悠史さんが会社勤めが向いてなかったというのもありました。
〇向いてないんです。実際にこんなことはなかったですが、あえてタイプ分けするなら上の人と喧嘩して辞めちゃうタイプで。
●会社員が向いていないから行く末は自分で何かやるしかないというのがあったんですよね。
〇大学を卒業した後は、スイミングコーチや競技用自転車販売のお店の立ち上げの仕事なんかをしていました。自転車屋さんって、そこで技術を身に着けて磨いて独立するってパターンが多いんですけど、僕は自転車の黒い油がつくのが苦手で、バイクいじりとかメカいじりとか好きというわけでもなく…なので自転車屋さんではお客さんとやりとりをする専門で。コミュニケーション担当でした。
――そこから鎌倉で自分のお店をやろうと思ったのはどういう流れだったのでしょうか?
〇自転車屋さんにいて独立しようと思っても自転車屋さんになりたいわけじゃないし、このまま会社に入ってもやりたいことは自分の経歴だとできないから会社員はない。じゃあ、自分で何かやるときはお店をやるのかな。と漠然と考えていました。
それで何も考えずに辞めたんです。仕事を。それまで休めて月1の休日で働き詰めだったので、1年くらいぼーっとしようと思って(笑)
働く気力はあるけれど、しばらく休みたいなと。
●そんなときに出会って、両親の後押しもあって、悠史さんが無職のまま出会ってからあっという間に結婚したんです。もともと両親同士が知り合いで安心感もあったからだと思いますが。
結婚するつもりで、働く気力がないわけじゃないなら後にするのも今にするのも変わらないって。
〇そこからすぐの僕の誕生日に籍を入れて、その1週間後くらいには鎌倉に引っ越したんですよ。
●私はそのころ舞浜で働いていたのですけど、生まれ変わったら江ノ電になりたい!ってくらいに中学生のころから江ノ電も鎌倉も大好きで。
舞浜まで往復ドアTOドアで6時間だったんですが、江ノ電を通勤に使っていいの!???って舞い上がっていたんです。
――美歌さんからしたら通勤の大変さよりも念願の鎌倉生活だったんですね!
〇そう。もうキラキラだったんだよね、最初。
●ただ、4ヶ月経った頃に倒れて救急車で運ばれてしまって。基本は元気なのですが。
〇だから、もう辞めようって言って。
――じゃあ、そこからお店作りをする方へシフトしたのでしょうか?
●そうですね。舞浜での仕事を辞めたあとは生きるためにアルバイトやパートをしていて。お店づくりの活動をスタートさせていきました。
【ご縁が繋がって築かれたお店づくり】
――イチからお店づくりをしたということですか?
●そうです。でも自分たちだけでっていうのではなく、もうすでにお店をやっている先輩たちや鎌倉で出会った人たちにたくさん助けてもらってお店ができていきました。
ちょうど引っ越してきたころに、鎌倉の学校というところで『鎌倉でお店を持つ講座』というのが連続講座で開催されるっていうのを知ったんです。第一弾の講座として。
〇知ったら、もう「やりまーす!私です!鎌倉にお店持ちたくて講座出たいのって!!」って、速攻で申し込みました。
●申し込みスタート前に申し込むっていうくらい意気込んでいて。
〇そうそう(笑)まさかこんなに食いつく人がいるとは思っていなかったらしくて(笑)一番でリストに入れてもらいました!
その講座の1期生として全6回ぐらいの講座で3か月間くらい、鎌倉でお店を始めた方にお話しを聞きに行って、店主さんがお店を立ち上げた経緯だとか大変だったことを乗り越えた経験とか話をしてくれて勉強していきました。細かく話してくれる方は事業計画書まで見せてくださったりして。
この講座の存在はとても大きかったですね。
―― 一番どのような点で講座の存在が大きかったのでしょうか?
〇やっぱり講座終了後も生徒と先生というような関係性が持てたこと。
「不動産屋さんを紹介してほしいんですけど」とか「こういうことを考えているんですけどどう思いますか?」など相談をする上で本当に助けてもらいました。
とくに講座で出会った北鎌倉の“石かわ珈琲”さんや御成通りにある子供服や子供用品を展開している“ぺぺアンドケイキ”さんと知り合えて、お二方は恩人中の恩人です。
●ほんっと、神様!!
〇それこそ石かわ珈琲さんは事業計画書まで見せてくれて。
あとは僕がコーヒーを出したいと思っていたのですが、そこでもいろいろと世話になって。
講座のご縁で繋がったので、一度石かわ珈琲さんのコーヒー教室に参加させてもらったことがあったんです。
そのあとに、鎌倉の学校でコーヒーのオリジナルブレンドを作ろうっていう石かわ珈琲さんとのコラボ講座がありそれも参加させもらって。
コーヒーをやるなら石かわ珈琲さんのコーヒーを扱わせてもらいたくて、直接本人に伝えたら「どうぞどうぞ!」と言ってくださったんです。
石かわ珈琲さんのコーヒーはスペシャルティコーヒーという特別なコーヒーなので失礼がないように講座も出ていましたが、修行があるかもしれないと覚悟はしていました。けれど「飯島さん、うちの講座出てくれているからもういいですよ。あとはご自身で練習して、わからないことがあればいつでもいいからお店に来て僕が淹れるのを見て、質問したいことがあれば何でも聞いてください。」って。実際に質問しに行けば練習用のコーヒー豆をくれたりもしました。
――心が広いのですね!快くOKしてくれて、さらに練習用のコーヒー豆までくれるなんて!
〇そうなんですよ。石かわ珈琲さんが言ってたと思うんですけど、
“自分たちもお店をやるときに人から恩をもらったから、その恩を繋ぐ役割をしたい”って。自分たちが受けた恩はその人たちに返すことはもちろんだけれど、また次の恩として繋げるのがお店をする人の喜びでもあるって話をしてくれたんです。
こういう人に僕たちもなりたいなって思います。
――人と人との繋がりあってこそのお店というのは大きいのですね!
〇ぺぺアンドケイキさんは子ども向けの商品を扱うお店をやっているので、ある意味同業者。なので僕らも失礼がないように「こういうお店をやろうと思っているんですけど、嫌じゃないですか?」というようなことを聞いたんです。そしたら「親子カフェやってよ!!」「私そういうことやりたかったし、できなかったからぜひやってほしいわ!私相談のるから!!」って言ってくださって。
――温かいですね!
〇本当に温かいんです。だからこそ、ぺぺアンドケイキさんで扱う商材があればうちでは一切扱わない。それは僕らとしては守らなきゃいけないルール。どこかの展示会であってもぺぺアンドケイキさんに確認をして、僕らが気になった商材を扱わないようであればうちもやろうかなという感じにしています。
――そうやってずっといい関係が続いているのですね。
●仲良くしてくれています。どちらのお店も。
〇お店にご飯を食べに来てくれたりするもんね。
――他にも何かお店をスタートするまでにどのような手助けやアドバイスなどあったのでしょうか?
●ぺぺアンドケイキさんは不動産のことなんかもたくさんアドバイスをいただきました。
「どんなに安くても変な物件だけは掴まされるな!!!」って(笑)
〇そう、それは何度も言われました。「絶対焦らないほうがいいよ」「何年かかっても待ちな」って口酸っぱく言ってくれて。もちろん温かい言葉で。
●「なくはないけど…家賃高くない?」とか「この家賃じゃお店回らないでしょ!」とかしっかりとみてくれたんです。
2年以上かかったけれど、おかげで今の物件に出会うことができました!
〇石かわ珈琲さんは内装の図面をみて、自分のお店が営業中のはずなのにお店で図面を確認しながら「ここをこういう風にした方がいいんじゃない?」って真剣に考えてくれて。自分の営業より気になっちゃてと連絡をくれる。それくらい親身になってくれて。
●物件も知り合いからの情報で不動産屋さんにその情報が行く前に情報を回してもらってでてきた物件だったり、工事してくれた素敵な大工のおじさんも私がパートしていたお店の社長さんが教えてくれた方だったり。自分たちでやったことは何ひとつない。
〇鎌倉に知り合いが全くいない状態で引っ越してきて、友達をつくるのも知り合いをつくるのも苦手な夫婦なんですが、少数できた繋がりの中からポンポンといろんな方がでてきたからそのときは自分たちでもびっくりしたんです!
●そう!こうやって歯車がかみ合うときはこんなにかみ合うんだ!って。
――ご縁と繋がりでできたお店なんですね。
〇そうなんです。ほかのお店屋さんに聞いてみてもそういう流れや動きがでるみたいです。こういうお店が建つときって。
――必然的に繋がっていくものがあるのですね。
【お店づくりにお子さんも大活躍!!】
●あとは娘の存在も大きかったです。
――具体的に教えてください。
●物件が見つかったのが長女が1歳3か月くらいのときで、よくそんな時期にオープンしましたねって言われるんですけど、そのときはその子がいてこそいろんな親子カフェに行けたからいろんなことに気づくことができたんです。このサービスはいいよね、これはあんまりかなとか。
〇夫婦二人だけだと体験できないこと、気づくことができないことを娘が気づかせてくれました。
●いろんなことに気づかせてもらえたよね。
サービスのことだけでなく、お店の内装品などについても。お店のこの椅子の高さ、机の高さも絶妙な高さに調整してあるんですが、これも長女が1歳という年齢だったからこそ気づくことができて、調整できたことなんです。
〇そう!だから子ども用の椅子は全部オーダーなんですよ!
――すごいですね!
●だから大人の椅子よりずっと値段は高いんです(笑)
――そんな特別な椅子に座られたら子供としては幸せですよね!
〇4歳くらいになったら子ども椅子はいらないだろうという計算で選んだ椅子の高さになっています。
●そう、1~3歳くらいまでの子がギリギリ食べられるくらいの高さで選ぼうって。あとはお店のスペースを考えて重ねられなきゃいけなくて。
〇だから業者用に家具を売っているお店に、その当時の長女の座面座高の高さを参考にオーダーして作ってもらいました。
●長女がいたからいろんなお店で椅子が高すぎると食べにくくなっちゃうし、低すぎても食べにくいっていうのを何度も経験することができていたからこそ気づくことができたんです。
――お子さんも一緒にお店作りをしてくれていたのですね!
●お店のおもちゃを置いたりおもちゃで遊ぶ棚も、大工さんの手作りで長女を実際に椅子に座らせて遊びやすかったり、反対に届いてほしくない2段目は手を伸ばさせてここならとどかないからこの高さでって作ってもらっていて。
〇完全に子どもたちが使いやすいようにするのは大人目線では難しかったので、長女がいたからこそのちょうどいい使い勝手になっているんです。
オムツ替えもできて授乳もできる場所の高さとかも。
●そうそう。こんな感じの手作り感溢れたお店ですが、私たちの今までの経験というより、みなさんとのご縁でできたお店です。
――いいですね!ご縁と繋がり。だからこその愛されるお店でもあるんですね!